MAZDA ロードスター RED TOP 試乗レビュー

2018年2月27日

おそらく、今なお「スポーツカー」と聞くと多くの人がスピードとパワーの象徴をイメージするのではないでしょうか?

長らく自動車エンジニアリングの世界でもスポーツカーはモアパワー・モアスピードの追求が正義とされてたのですが、今から約30年前モアパワー・モアスピードという命題を根幹から揺るがす一台の小型2座席オープンスポーツカーが遥か極東で生まれました。

それが今もなお多くのクルマ好きに愛され続けるNA型ユーノス・ロードスター、海外名マツダ・ミアータです。

2015年に現行のND型にモデルチェンジし、世代としては4代目となりましたが、昨年11月より2018年3月31日までの受注期間限定でワインレッドのソフトトップを装着したレッドトップがラインナップされ、今回はそのレッドトップの試乗レビューをお送りしたいと思います。

ファニーなフェイスデザインから眼光鋭い顔つきに

お邪魔したのは、マツダオートザム大垣東、今まで知らなかったのですが既に販売チャネルは統一されたものの「オートザム」という店名自体はまだ一部残っているんですね。

今までのロードスターのファニーなフェイスデザインから一転、ミラーに映ったら道を譲らざるを得なく感じるような眼光鋭い顔つきになったのは意見が分かれるところかもしれません。

しかし、かつてはマツダ地獄、マツダと言えば値引き勝負と言われていた時代も遠い過去の話になってしまったのを象徴するかのように、今や車格、グレード問わず生活臭や安っぽさを感じさせない質感に精悍なフォルムを纏う、世界有数のプレミアムカーメーカーに転じた稀有な日本車ブランドかもしれません。

ある海外の自動車ジャーナリストだったと思うのですが、「日本車のデザインには色気が無かった。ようやく日本車も色気のあるデザインをするようになった」という記述を見たことがありますが、特にその点においてはマツダは大きく変わった物だと思います。

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より官能的なデザインへ

昔は外観は良くも悪くもロボットアニメのメカ(むしろこれをエキゾチックに受け取った海外ユーザーも多かったとは思いますが)、インパネは実用車と大差ない素っ気ないデザインの国産スポーツも見受けられましたが、ロードスターはここにきてようやく一つの成熟期を迎えたように感じます。

数多くの官能的スポーツカーを送り出してるイタリアからフィアット124バルケッタのOEM供給のオファーを受けるのも頷けます。

日本車は今後「安くて高品質」から「高品質でプレミアム」へ脱却しなければやがて新興国の自動車メーカーに追い落とされるのは時間の問題でしょう。しかしもうマツダはその心配は無いのかもしれません。

目つきは鋭くなったものの、ロングノーズ、ショートデッキのフォルムと抑揚を持たせ端を絞り込んだ古典的スポーツカーの現代的解釈というロードスターの基本コンセプトは健在です。よく見るとホイールもマグライトやワタナベでお馴染みのエイトスポークを思わせるデザインですね。

頑固者が多い初代のNAロードスターのオーナーですら「まさしくロードスター以外の何物でもない」と唸らせると聞きます。

タイトな車内がまさにロードスター

当然ですが、車内は非常にタイトです。センターコンソールとシートには隙間が無く、シートバック後ろにはソフトトップの収納スペースがあるだけなので、頭の後ろは圧迫感すら感じるかもしれませんが、このクルマにそういう事を言うのも野暮でしょうし、このクルマが欲しいという人はそんなものは求めていないでしょう。

でも、ソフトトップを下ろしてしまえばこの通り、この解放感は天気のいい日に二人で独占するためだけにあるのですから本当に贅沢なクルマなのです。

それでは、お楽しみのロードスターレッドトップの試乗ドライブに参りましょう!

ストロークは短めで小気味よく決まるギアシフト

独立した丸型メーターを備え、タコメーターの針とスピードメーターの針が垂直式で、エンジンが最もパワーを発揮する5000rpm前後を一番上、何気にフルスケール200km/hのスピードーメーターなのがドライバーをそそります。

試乗車はお約束の6速MT、リバースはニュートラルでレバーを押して右上、手首の動きだけで小気味よく軽くギアシフトが決まります。

クラッチはストロークが短めですが、かといってクラッチ操作に気を遣わなければエンストしたりいきなりガコンと繋がることもなく発進できます。免許取得以来MTは運転したことないけどMTのスポーツカーを運転できるか自信は無いと言う方でも、すぐに慣れることができるかもしれません。

誤解を恐れずに言うと、NDロードスターは運転操作に関してはファミリーカーと大差なく拍子抜けするくらいに簡単に走ってくれます。

全開にすればタイヤスモークを巻き上げながら加速するというわけでもありません。でも、幌を下ろし風を感じながら、小気味よいシフトレバーを操作しながら、ただ普通に町を走っているだけで全く違う世界を感じる事になります。

ウィンカーひとつでもワクワクできる

ただ人が行き交う町の中を、法定速度と信号を守りながら走るだけで、クラッチを操作して、ギアシフトして、アクセルを踏んで、ブレーキを踏んで、ステアリングホイールを回しているだけなのに、その一つ一つの操作が楽しいのです。

ウィンカースイッチ一つ動かすだけでもワクワクするクルマなんて世界中探してもそうそうないでしょう。

流石に、混雑した市街地とバイパス道路でディーラーの試乗車とあって、ギリギリまでブレーキングを我慢したコーナリングとか全開走行というができるわけでもなく、ストッピングパワーがどうのとか限界域のスタビリティがというのは申し訳ありませんがここで論じる事はできません。

でも、このロードスターと言うクルマはスポーツカーでありながら動力性能の事などどうでもいいと思える不思議な魅力があります。

誰でも純粋に運転操作やスポーツ走行を楽しめる

今回試乗した車両はMTですがATでオープンエアとハンドリングだけを楽しむというのも大いにアリかもしれません。勿論、AT限定の方がロードスターのMTに乗るためだけにMT車の教習を受けてAT限定の解除をするだけの価値も十分にあるとも付け加えておきます。

冒頭で書いた通り、ロードスターがあえてスポーツカーでありながらモアパワーを求めない事の美点の一つの「誰でも純粋に運転操作やスポーツ走行を楽しめる」というのがあります。

今や海外のスーパースポーツカーであればノーマル状態で800馬力近いクルマも珍しくありません。

最早F1マシンに匹敵するパワーのエンジンを一般のドライバーが昔ながらの油圧クラッチとギアボックスをフットペダルとHパターンのシフトレバーで制御しきれるでしょうか?

近年、世界中のスーパースポーツカーから3ペダルMTが消えつつあるのはそういう事情もあるのです。

ND型ロードスターでは大胆にもダウンサイジングを敢行、ボディ軽量化だけでなくエンジンを1.5Lスカイアクティブにダウンサイジングし、170馬力から131馬力にデチューン、国内仕様で唯一2Lエンジンを採用するRFですら158馬力にデチューンしています。

しかしこれこそがロードスターが求める理想のスポーツカーの哲学なのでしょう。

スポーツカーにとってモアパワーというのは振り払うのが難しい甘い誘惑です。新型となれば開発はもっとパワーを追いかけたくなります。販売もカタログを飾るパワーが欲しくなります。

しかしそれを繰り返した事で、当初は誰でも気軽に買えて運転を楽しめる安価で軽快な小型スポーツカーが大型化、高出力化を繰り返し、次第にユーザーが離れて販売も開発も迷走してしまったという事例は枚挙に暇がありません。

現代ではスピードを出すのが目的であれば別にスポーツカーである必要はありません。

エンジンの高性能化、トラクションやスタビリティのコントロールシステムの普及で、フルサイズセダンやSUV果てはミニバンですら300馬力近いクルマも珍しくありません。

これらのクルマであれば一世代前のスポーツカーを凌駕する動力性能を持っているくらいでしょう。前述のとおり800馬力クラスのスーパースポーツとなればもはやフルオートのハイテクデバイスのサポート無しに人間が操作することは困難です。

しかもそれらのスーパースポーツカーのドライバビリティを堪能するには国際コースクラスのサーキットでなければ不可能でしょう。

裏路地を20~30km/hで走るだけでも楽しめるクルマ

マツダの考えるスポーツカーの存在意義として、スポーツカーは運転を楽しむためにあるというのであれば、過ぎたパワーとスピードはむしろ邪魔になるという禅問答のような答えがNDロードスターであり、そのスローガンの「人車一体」ではないでしょうか。

実は私事ながら筆者の友人に最近になってNAロードスターのオーナーになった人がいるのですが、ロードスターを購入したとたん、ロードスターの話しかしなくなり、ロードスターに関する記述はなんでも読み漁り、寝ても覚めてもロードスターの事ばかり考えるくらいに溺愛するようになってしまった人がいます。

どうやらオープン2シーターというかロードスターというクルマ自体に人生観を変えてしまう程の魅力があるようです。

ちなみにその友人のNAはATで、理由を聞くと「MTなら既にバイクに乗ってるので、クルマはオープンエアを感じながらゆったり流せるのが欲しかった」という事らしいのですが、実際にNDに乗ってみて友人が言っていた事がわかるような気がします。

「輸送機器としての自動車」として見れば、ロードスターには何一つ評価できるものはありません。

1960年代のスポーツカーと違い最低限の快適性や乗り心地こそ有している物の、二人乗りで荷物も二人分のキャリーケースが載る程度、スポーツカーと言っても数値的性能では大型SUVにも劣ります。

そのくせオープントップのため保管には幌の保護や手入れを要するなど、何一ついい所はありません。このクルマは「運転を愉しむ」ただそのためだけに存在しているのです。日常の移動、通勤、ただ近所のコンビニに煙草を一箱買いに行くためだけに運転するだけでも楽しいでしょう。

サーキット走行でも他のドライバーが0.01秒のラップタイムに眉間にしわを寄せてピリピリしてしてるなかでも、「今日は全然タイム出なかったけど楽しかった!」と言えるのではないでしょうか?

裏路地を20~30km/hで走るだけでも十分楽しいというクルマは滅多にありません。もしかしたら走ってなくてもソフトトップを下ろして何も考えずに空を眺めているだけでも楽しいかもしれません。

この「運転自体が楽しい」という普遍的な面白さこそロードスターが老若男女様々な人から愛される所以なのでしょう。尚、ロードスターレッドトップは3月31日までの期間限定オーダーなのでご興味のある方はお早めにお近くのマツダディーラーにお問い合わせください。

試乗車協力
マツダオートザム大垣東
http://www.maz-ogaki-e.co.jp
〒503-0837 岐阜県大垣市安井町3丁目1番地
TEL:0584-74-8055 FAX:0584-75-1723
E-mail:ogaki-higashi.sl@mazda-autozam.jp
営業時間:9:00~19:00 定休日:水曜日

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鈴木修一郎

愛知県名古屋市在住。自動車部品商、民間車検工場の陸送ドライバーを経て、念願の自動車ライターに。愛車は昭和44年型スバル360スーパーDX、昭和48年型トヨタセリカLB2000GT。スバル360は現在自宅軒先でDIYレストア中。DIYメカや整備工場関連の経験を活かしユーザーと整備の両面からの考察を心がけている。