アイドリングストップ車のバッテリー選びの基礎と特徴について

近年のエコカーの技術の進歩は目を見張るものがあり、今話題の電気自動車にもはやすっかり当たり前になったハイブリッドカー。

通常のガソリン車でも空力やエンジンの燃焼効率の適正化、CVTといった、機関系の効率の見直しに飽き足らず、信号停車中などのでアイドリング状態のまま一定時間経過すると、エンジンを停止し、ブレーキを離すと自動的にエンジンを再始動し、停車中の燃料消費及び二酸化炭素の排出を抑える「アイドリングストップ機構」を装備する車両も増えてきました。

中にはスズキのエネチャージのように停止時の制動エネルギーを回収して一旦大型のバッテリーに充電し、発進時はスターターを回さず、一時的に発進用のモーターで走行しながらスターターを使わずエンジンを再始動するというクルマもあります。

しかし、このアイドリングストップの普及によりバッテリーの負担が増えているのも事実です。アイドリングストップ未対応のバッテリーの場合、バッテリーの寿命を縮めてしまう可能性もあります。そこで今回はどんなバッテリーを選んだらいいのか考えていきましょう。

そもそもバッテリーはなんのためにあるの?

まさかラジオか時計みたいに、クルマの電装品の電源は全てバッテリーで賄っていて数年ごとに電池切れになるので交換するものと思ってる人はいないとは思いますが、ここで何故自動車にバッテリー(蓄電池)が搭載されるに至ったかを説明しておきましょう。

20世紀初頭の自動車で車体前部にクランクハンドルを差し込んでグルグル回してエンジンを掛けている描写を絵本や古典映画などで一度はご覧になっているのではないでしょうか?

昔の自動車はエンジンさえ回ってしまえばマグネットを使った点火装置を使っていたので、動かすのに電気を使う必要も無くヘッドライトもアセチレンガスバーナーでした。

電気式スターターが開発されたきっかけ

世界で初めてエンジンの始動に電気式スターターを採用したのは1912年型キャデラックとされています。

きっかけはキャデラックの創始者、ヘンリー・リーランドの友人のバイロン・J・カーターが道端でキャデラック車のエンジンを上手く始動できずに途方に暮れていた女性の代わりに、その女性のキャデラックのエンジンを掛けようとしてエンジンの始動に失敗して逆回転したクランクハンドルで顎の骨を折る重傷を負い、入院中感染症で死亡した事でした。

友人の死をきっかけにリーランドは電気式エンジンスターターの開発に着手します。昔はエンジンを始動するという作業一つでも危険を伴うもので女性は勿論、男性でも1人で始動するには大変な操作だったのです。

当初はバッテリーに蓄えた電気でスターターモーターを駆動し、スターターモーターをそのまま発電機として使用しバッテリーを充電する方法が採られました。(現在ではオルタネーターと呼ばれる発電機とスターターモーターは別々についています)

この際に明るく手元のスイッチ一つで点灯可能な電気式ヘッドライトも同時に採用されます。

この装置はキャデラックのオプションでしたが瞬く間に他社にも広がり1920年代には世界中の自動車が採用するに至ります。

本来はエンジンを始動させるモーターを駆動させるためのバッテリーですが「発電機がら電源が取れる」となれば当然、灯火器類は勿論ラジオやエアコン、パワーウィンドーといった電気で動く車載装備品を載せたくなるのが人情です。

ただ、これらの装置を一抱えのバッテリーで賄うのは不可能で、エンジンがかかっていない状態で電装品を動かすことは長らく御法度でした。

環境問題がきっかけで生まれた「アイドリングストップ」

しかし、温室効果ガスの削減が叫ばれクルマの燃料消費を抑える必要が出てきたことで話が一変します。

温室効果ガスの元凶言われている二酸化炭素の排出を削減するためにその多くを占めているクルマの排出ガスの排出量を減らすために、一定時間停車が続くと自動的にエンジンを停止し、発進時に自動的にエンジンを再始動する「アイドリングストップ」が採用されるようになります。

これまで、エンジンの停止中に電装品を作動させることはタブーですらあったのですが、アイドリングストップによりエンジンの停止中でもラジオやエアコン、時にはヘッドライトやワイパーなども動きっぱなしでなければならないという事態になったのです。

昔はよくヘッドライトを消し忘れてエンジンを切ってクルマを離れたり、調子が悪くて何度もスターターを回している内にバッテリーが上がってしまったという話を聞いたのですが、アイドリングストップ車ではそれが恒常的に起こるため、バッテリーの負荷も以前より遥かに大きい物になりました。

大量の放電に強く短時間の充電で済ませられるバッテリーの重要性

まず必須条件として大量の放電に強く短時間の充電で済ませられる物であることが求められるようになったのです。

そのため、エコカー対応バッテリーなるものが出現するに至ります。それまで軽自動車や小型車用バッテリーの容量といえば19Bサイズで30Ahからせいぜい40Ahくらいでしたが最近は44Ahや55Ah、果ては60Ah以上という昔なら中型車~大型車並みの容量のバッテリーを使用しているケースもあります。

バッテリーの規格は基本サイズで決まっています。

最近はあまり見かけなくなりましたがA19L(R)に始まり、B19L(R)、B24L(R)、D26L(R)、D31L(R)、E41L(R)、F51L(R)、G51L(R)、H52L(R)と大きくなっていきます。

このほかに車種専用サイズや輸入車用サイズもありますが割愛させていただきます。先頭のアルファベットはバッテリーの形状、数字はバッテリーの長さ、LとRは端子の位置を表しています。バッテリーの+端子を短側面側から見て端子が左側にあればL、右側にあればRです。

一番多く使われているのがB19L(R)もしくはB24L(R)でしょう。

基本的にはこのアルファベットの後の規格が同じであれば先頭の数字に関係なく取付は可能です。容量が指定の数字より大きくなる分には全く問題ありません。

むしろ夜間の走行が多い、寒冷地に住んでる方などバッテリーへの負担が大きい方には容量アップはメリットにもなるかもしれません。

問題はその逆です。

先頭の数字より小さいバッテリーにした場合、特にアイドリングストップ車は、エンジン停止中にもヘッドライトやエアコンのブロアで電力を消費するため、旧来の小型車用のバッテリーを使用すると電力不足を起こす可能性があります。

充電制御システム車にも専用のバッテリーを

また忘れてはいけないのが「ウチのクルマはアイドリングストップ車ではないから専用バッテリーでは無くてもいい」と言うわけでもなく、近年のクルマはアイドリングストップ車ではなくても充電制御システムが搭載されているという事です。

前述のとおり、クルマに搭載しているバッテリーはエンジンで駆動している発電機で充電しているのですが、発電機を回せばエンジンに負担がかかります。

発電式の自転車用ヘッドライトを使うとペダルが重くなるのと同じです。

バッテリーを充電したり、ドライバーがエアコンを効かせたりラジオを聞いたりして電気を使うと、クルマのエンジンもその電力供給のために負担も増えるのです。

当然、エンジンに負担が掛かればその分は燃費や二酸化炭素排出量に影響します。ガソリン一滴も無駄に出来ないエコカーにとってはどんな些細な事でもエンジンに余計な負担をかけるわけにはいきません。それは発電機の駆動抵抗とて例外ではないのです。

そこで充電制御システムが導入され、バッテリーが満充電されると一旦充電を止め、バッテリーに蓄えた電力が減ったら充電を再開するというシステムが導入されています。

しかし常時、電装品の電力をオルタネーターで賄いバッテリーは微量の電力で満充電状態を保つのと違って、減っては充電、減っては充電を繰り返していればバッテリーへの負担も大きくなります。そのため、現在「アイドリングストップ車対応」と銘打ってるバッテリーはこの充電制御方式対応となっている場合が多いようです。

余談ですがこの、発電機を作動させた時に発生する抵抗を逆手に取ったのが、電気自動車やハイブリッドカー、エネチャージで知られる「回生ブレーキ」で、発電抵抗を減速するためのブレーキとして利用しています。

勿論、電車を走らせている各鉄道会社も列車の回生ブレーキで発生した電力は他の車両を走らせるための電力として使用しています。

アイドリングストップ車・充電制御システム車には必ず専用バッテリーを

基本的にバッテリーの規格はバッテリーのサイズだけで決まっています。

従来の車両にエコカーのバッテリーを搭載する分には全く問題ありません。同じバッテリーサイズであればアイドリングストップ未対応のバッテリーでも取り付けること自体は可能で、走ること自体は可能ですが、バッテリーの性能を著しく低下させバッテリー上がりの原因になります。

アイドリングストップ未対応のバッテリーをアイドリングストップ車に使用した場合、保証期間内のバッテリー上がりでも保証が効かない可能性もあります。

また、アイドリングストップ未搭載でも「充電制御システム付」というクルマとなっていたら要注意です。

こちらも、充電制御未対応のバッテリーを使用すると、充放電の繰り返しで保証期間内のバッテリー上がりを起こす可能性が考えられます。

同じサイズだから付くだろうと考えて値段だけで選ばず、必ず充電方式に合ったバッテリーを選んでください。ちなみに、アイドリングストップ車でなくても車検証上の「車両型式」の欄が「DBA‐」「CBA-」で始まる車両は充電制御システムが搭載されてる可能性が高いとのことです。

エコカーオーナーの皆様、バッテリー交換の際はメカニックと相談の上適切なバッテリーを選んで快適なエコドライブをお楽しみください。

鈴木修一郎

愛知県名古屋市在住。自動車部品商、民間車検工場の陸送ドライバーを経て、念願の自動車ライターに。愛車は昭和44年型スバル360スーパーDX、昭和48年型トヨタセリカLB2000GT。スバル360は現在自宅軒先でDIYレストア中。DIYメカや整備工場関連の経験を活かしユーザーと整備の両面からの考察を心がけている。