ディスチャージヘッドランプとは?HIDヘッドライトのメリットデメリット!

夜間にクルマを使う機会が多い、山間部で街路灯のない道路を走る機会が多い方の場合、ヘッドランプは明るいに越したことはないという方も多いかと思います。

今回はヘッドライトは明るい方が良いという方向けにディスチャージヘッドランプについてお話ししようと思います。ディスチャージヘッドランプ、キセノンヘッドランプ、HIDヘッドランプ様々な呼び方がありますが、呼び方が違うだけですべて同じものです。

自動車関連の販売店では主にHIDヘッドランプと呼ばれている事が多いようなので、以後HIDヘッドランプと表記します。

ヘッドライトの役目

ヘッドライトの役目と言えば、もちろん真っ先に思いつくのが日本語表記の「前照灯」とあるように夜間に進行方向を照らすのが最も重要な目的ですが、それと同じくらい重要な役目として自車の存在を知らせるというのがあります。

自動車運転免許の取得年齢になる前、よく自転車に乗る時に「自分から相手は見えていても相手からは見えないから暗くなったらヘッドランプを点けなさい」と言われたのではないでしょうか?

最近は歩行者でも夜間は反射材やLEDランプを身に着けるなど、交通安全における灯火の重要性の認識は高まっています。

ヘッドライトの変遷

また歴史の話ですが、ヘッドランプの歴史は長く、馬車の時代から石油ランプやアセチレンガスランプが使用されていました。自動車が発明される前から車両にとって夜間の視認性は必須だったのです。

自動車が発明されたあとも石油ランプやアセチレンガスランプが使用されていましたが、「アイドリングストップ車のバッテリー選びの基礎と特徴について」で触れたとおり、世界で初めて電気式エンジンスターターとバッテリーとジェネレーターを搭載した1912年型キャデラックモデルサーティーが世界で初めて電気式ヘッドランプを採用します。


(世界で初めて電気式ヘッドランプを採用したとされるキャデラックモデルサーティ)

また1923年からはル・マン24時間レースが始まり、夜通し全開走行を続ける夜間のレースは当然危険を伴うもので、明るく安全なヘッドランプの技術開発を促したと言います。

所で、クルマのヘッドランプというとある一定の年齢以上の方なら、昔は大きな真ん丸か真四角のガラス製のヘッドランプが2灯、もしくは4灯付いていたのをご記憶の方もおられるのではないでしょうか?

1940年代に入ると自動車大国アメリカでは破損しても入手と交換が容易という理由からシールドビームと呼ばれる、ガラス製レンズと反射板とフィラメントが一体になった同一規格のヘッドランプの採用が義務付けられます。


(標準規格のシールドビームを採用した1953年式キャデラック)

シールドビームの使用義務自体はアメリカ国内の法律です。

ただ、世界中の自動車メーカーにとってアメリカは最大の市場であるため、事実上アメリカのヘッドランプの規格や取付位置の基準は世界基準同然になり長らく世界中の自動車メーカーがアメリカ基準準拠(北米輸出仕様だけ作り分けていた、日本、イギリスなど左側通行の国は同一規格のレンズでレンズカットのみ左右逆という事例はあります)シールドビーム式の白熱球をヘッドランプに採用していました。

ハロゲンランプの普及 そしてHIDヘッドランプへ

しかし1970年代からヘッドライトに変革が起こります。

オランダフィリップスがH4規格の替え球式ハロゲンバルブを開発、シールドビームと同じ形状のレンズでバルブのみ交換可能なセミシールドタイプにすることでそれまで球切れを起こすとレンズごと交換していたのを、電球のみ交換する事が出来るようになります。

やがてハロゲンランプが普及すると1984年アメリカでついにヘッドライトの統一規格の義務がなくなり、自動車メーカーが自由にヘッドランプをデザインできるようになります。

このころプロジェクター型のヘッドランプも開発され薄型でも十分な照射能力を持ったヘッドランプが実現します。

2000年以降スポーツカーからリトラクタブルライトが消滅した理由は安全上の問題のほか、薄型ライトでリトラクタブルにしなくてもアメリカのヘッドランプの取り付け位置の基準を満たせるようになったため、リトラクタブルにする意味もなくなったためと言われています。

そして1997年ヘッドランプに新たな革新が生まれます。それがキセノンガスを封入したバルブを使用したHIDヘッドランプです。

HIDヘッドランプとは

バーナーと呼ばれるガラス管にキセノンガスを封入し電極間で放電することで光を放つもので、一般的には蛍光灯のような原理と言われています。

そのためバーナーを安定させるためには蛍光灯と同様「アンプ」「バラスト」と呼ばれる装置が必要となります。

白熱電球よりも高効率で消費電力も少なくフィラメントを使わない事から物理的な球切れが無いため寿命も長くランニングコストが安いともいわれています。

HIDは独特の青白い光を放つこともあり、ファッション目的で付けるユーザーも多く、まだHIDが高価だったころはHIDヘッドランプをイメージした光色のH4バルブというのも出回ったくらいでした。

明るさでは最強のHIDヘッドランプ

日本で最初にHIDヘッドランプを採用したのは大型トラックだそうです。「あまりに高価だったから」という理由によるもののようで、主にスポーツカーなど趣味性の高いクルマを中心に普及していきます。前述と同様HIDヘッドランプも夜間のレースから導入された技術が市販車にフィードバックされたもののようです。

HIDが普及し始めたころは、なにもここまで明るくしないでもと閉口することもあったのですが、まだ東海北陸道の奥飛騨トンネル区間が未開通だったころ、筆者が日も落ちて民家も街灯のない真っ暗な国道156号をシールドビーム2灯のクルマで走ったときに、ハイビームにしてフォグランプも点けてようやくつづら折りのカーブを視認できた時に、なぜこうも急にHIDが普及しだしたのかようやく理解できたことがありました。

いつしか、信号停車で後続に大型トラックがついたらヘッドライトを消す様に配慮してくれるようになると、時には一切明かりのない山岳路を夜通し走って大変なんだろうなぁと思うようになりました。

当初はトラックや高級車、スポーツカーのオプション装備でしたが、最近では低価格帯のクルマでも上級グレードやオプションで採用するようになり、安価な後付けのHIDキットも存在します。

夜間の走行が多い、山間部など全く明かりのない夜道を走る事が多い方はクルマを選ぶ時点でHIDヘッドランプを採用しているモデルを選ぶか、後付けHIDキットを購入するのも一考ででしょう。

HIDヘッドランプにはこんなデメリットも…

もちろんHIDヘッドランプといえども万能というわけではありません。

まず第一には初期投資がかかるということでしょう。HID装着車を新車購入しようとすれば必然的にオプション、もしくは上級グレード車など、車体価格に反映されることになります。

後付けの場合安価なノンブランド品から有名メーカー製までさまざまな物がありますが、バーナーだけでも2000円前後から高価な物では1~2万円、信頼性を考えるとやはり最低でも5000~1万円は見ておいたほうが良いでしょう

またHID化はバルブ(バーナー)だけでなく、バラストも必要になります。

かつては何万円もしたバラストも最近は安価な中国製が出回りるようにました。昔はよく中国製は品質が安定してなかったり防水対策が不十分ですぐに点灯不良を起こすという話を耳にしたものですが最近は、中国製品も品質があがりメーカー純正品とそん色ない物も増えています。

しかし、機構上余分な回路が増える分、ハロゲンランプよりも電気的故障を起こす確率は確実に増えます

DIYで取り付ける場合は、配線の取り回しを考えないと接触不良や断線による点灯不良、熱や風雨によるバラストの故障、最悪の場合ショートによる火災の原因にもなりえます。後付けの場合は整備工場やカー用品店で取り付けの相談をすることをお勧めします。

また、点灯不良の修理も非常に手間がかかる物になります。

白熱電球式のヘッドランプであれば大抵の点灯不良は球切れか最悪ヒューズの断線のどちらかが殆どですが、HIDヘッドランプの場合、バーナーの球切れなのかバラストの破損なのか、後付けの場合は後付けの配線が原因なのかを特定する必要があります。

ハロゲンバルブの場合、球切れであれば近くのカー用品やホームセンター、場合によってはフルサービスのガソリンスタンドで同規格、同スペックのバルブを安価に調達することもできますが、HIDのバーナーの場合、同規格同スペックのバーナーを入手できるとは限りません。

規格が同じでも光の色温度が違えば整備不良となります。ましてやバラスト交換となれば現地修理はほぼ不可能と言っても良いでしょう。

HIDの致命的な欠点としては蛍光灯と同様、点灯してから光量が安定するのに数十秒ほど時間がかかるため点灯直後は薄暗いというのがあります。

そのためロービーム、ハイビームの切り替えが苦手でロービーム側のみHIDでハイビーム側はハロゲンバルブを併用する、もしくは常時ハイビーム点灯のまま、リフレクターを動かしたり、ソレノイドでバーナーを動かしたり遮光板を動かしたりすることでローハイ切り替えをするといった形で対応しています。

また、HIDは放熱量が低いため、悪天候時雨が蒸発しにくい、降雪時はヘッドライトに雪が積もりやすいという欠点もあります。

特に後付けHIDは要注意

基本的にクルマのヘッドランプはそのクルマに使用するバルブの規格に合わせてリフレクターやレンズを設計しています。

そのためH4ハロゲンバルブの使用を前提に設計されたヘッドランプユニットにHIDヘッドランプユニットを後付けする場合、光軸や配光特性の相性が合わない場合があります。

商品には「車検対応」「保安基準適合品」と謳っていても必ずしも全てのクルマに対応しているとは限らないということを念頭に入れておいてください

またファッション目的で取り付ける場合、色温度が6000K以上のものは保安基準にある「平成17年車は白もしくは淡黄色、18年車以降は白」という光色の基準値から外れる可能性が高い(最終的には検査官の目視による判断)ため、青白い色温度の高いバルブを使用する際は注意してください。

また、光軸が合っていないとロービームの状態でも対向車に眩惑をともなったり、前走車のバックミラーに反射して眩惑をともなったります。HIDヘッドライトを取り付けた際はかならず光軸があっているかどうかを確認しましょう

あと意外なところでは、HIDは紫外線量が多いため、ハロゲンランプ前提で設計されたランプユニットの場合、HID専用ユニットと比べてレンズの黄変が進みやすいという話もあります。

また、よく高効率と言われていますが、バーナーのワット数は少なくてもバラストの駆動で電気を消費しているので全体の消費電力はむしろHIDのほうが多いという意見もあります。

まとめ

とにかく明るさで言えば、HIDは現在最強といえるでしょう。

しかし、構造が複雑になる初期投資が高いという点では、H4ハロゲンのクルマにHIDというのはコストパフォーマンス的に見合ったものになるかと言われるとちょっと疑問を感じざるを得ないかもしれません。

とはいえ、筆者の周りでも一度HIDの明るさを知ったら、もうハロゲンランプには戻れないという人も多いのですが、夜間走行が多くて、クルマのヘッドランプにとにかく明るさを求めているというわけでもなければ、後付けしてまでHIDにするほど必要性はないかもしれません。

ヘッドランプユニット自体にに明るさを求めるよりもむしろ、常にヘッドランプのレンズを綺麗に保ち路地裏や高速道路で前走車がいない時などは、こまめにロービーム、ハイビームの切り替えを心掛けるようにするほうが重要かもしれません。

それでは快適なカーライフを。

鈴木修一郎

愛知県名古屋市在住。自動車部品商、民間車検工場の陸送ドライバーを経て、念願の自動車ライターに。愛車は昭和44年型スバル360スーパーDX、昭和48年型トヨタセリカLB2000GT。スバル360は現在自宅軒先でDIYレストア中。DIYメカや整備工場関連の経験を活かしユーザーと整備の両面からの考察を心がけている。