車の傷を目立たなくするポイントを現役整備士が解説

車好きであれば、新車同様の艶を常に維持したいという気持ちはみな同様です。ただ、車の塗装は日々の使用条件により細かな傷が増えていくと同時に、塗装の艶も引けてきてしまいます。

それらの傷を目立たなくすることで艶を維持するにはどうすればいいか。また、傷の程度により消せる傷消せない傷が存在してきますので、自動車整備会社に勤めて塗装・鈑金・整備を15年以上行なってきた筆者が順を追って解説とアドバイスを行っていきます。

新車から日が浅く、傷自体もごく浅いならスプレーワックス

どれほど塗装が新しく、綺麗な状態でも洗車での傷は避けられません。直射日光などの強い光が当たれば傷が目立ち、どうにか簡単に消せる方法は無いかと模索するでしょう。

塗装が新しく、比較的傷が少ない場合はスプレーワックス等の簡易的なもので充分に効果を発揮するでしょう。もちろん、細かな傷に対してはポリマーなどのコーティングを施行することが最良の方法ではありますが、コーティング施行には数万円以上の費用が発生します。

新車購入の段階でポリマーコーティングを行っていても、度重なる洗車によって塗装へダメージ与え続けるため、洗車傷の発生を防ぐことは不可能です。

スプレーワックスを自ら施行する所要時間はおよそ30分未満です。

ボディにスプレーを吹き付け、専用クロスで拭き取るだけの作業ですので、洗車を行う際は業者へ委託しているような方などでも簡単に施工可能なのがスプレーワックスの特徴です。

現在では用途に応じた多種多様なスプレーワックスが発売されていますが、樹脂やガラスといった塗装されていない面へ万が一付着しても悪影響を及ぼさない物まで開発されていますので、未経験の方でも安心して使用可能です。

スプレーワックスの価格も2,000円程度と安価に設定されており、使用回数も10回~20回程度(車種により異なる)と比較的長持ちする傾向にあります。

洗車の度にスプレーワックスを塗り重ねることで塗膜の保護を強化し、洗車傷などによる艶の退けも抑えられるでしょう。

しかしスプレーワックスの特徴として挙げられるのが、施工が容易な反面、長持ちしないことや皮膜が薄いといったデメリットがあります。

こまめに施工を繰り返すことで皮膜の薄さをカバーするとともに、皮膜も厚く形成されていくため艶の維持も容易になるでしょう。

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「オーロラマーク」が発生したら固形ワックスがおすすめ

新車登録から数年経過し、洗車傷によるギラつきが見られるようになった。このギラつきとは一般的に「オーロラマーク」と呼ばれています。

濃色車では特に目立ちやすく、夜間に強い光が当たる状況や、直射日光が当たる環境で円を描いたような傷に見える現象を「オーロラマーク」と呼んでいます。

この状態では先ほどのスプレーワックスの施行だけでは傷を隠すことも難しく、何度も何度も繰り返し施行しなければなりません。先ほども明記したとおり、スプレーワックスは作業性が高く誰でも簡単に施行可能なのが特徴ですが、その反面皮膜が極端に薄く、浅い傷や繰り返しの施行のみでしか充分な効果を発揮できません。

オーロラマークが発生してしまった場合には、固形型のワックスを使用することで最大限の効果を発揮できるでしょう。

しかし固形型ワックスの施行には経験や慣れが必要であり、ワックス施工未経験での施行ではムラが発生しやすく拭き取りも容易ではありません。

簡単なポイントとして、以下の点に注意するといいでしょう。

直射日光などでボディが熱くなる状況下で施行しない

スプレーワックスではボディが多少熱くても拭き取ることは可能ですが、固形ワックスでは困難を極めます。

ワックスが焼き付きボディに張り付いてしまえば爪などで剥がす必要があり、最悪の場合傷発生の原因ともなりかねません。

極力薄く塗ることを心掛け、1度に厚塗りをしない

固形ワックスを極端な厚塗りにしてまうことで1部分のみ深い艶になり、皮膜が均一ではないためにムラになる恐れがあります。

可能な限りワックスを薄く伸ばすことを心掛け、乾燥する前に拭き取ることで均一な艶と傷消し効果を発揮できるでしょう。

雨の日や湿度の高い日の施行は避ける

薄く伸ばすことが可能であれば問題はありませんが、厚塗りをすることでワックス分の中に水分が入り込んでしまい、乾燥に要する時間が変化してきます。

乾燥した箇所、していない箇所を同時に拭き取ることでこちらの状況でもムラが発生しやすくなりますので、ワックスの施行は曇りの日や日陰などの環境を選び、直射日光は避けて作業を行うよう心掛けましょう。

傷が多数あり、艶も無くなってしまったら

車に十数年乗り続けていると、太陽が直接当たるボンネットや屋根などは高温に晒されることとなりますので、パネルに大きなダメージを与えることとなってしまいます。

これにプラスし、度重なる洗車の繰り返しにより塗装が削れていき、塗膜が薄くなっていることも原因です。

このような状況ではワックスなどの簡易的なものでは対処不可能となりますので、コンパウンドを使用して塗膜を削らなければなりません。塗膜を削ることで傷を消すと同時に艶も復活しますので、新車の艶とは行かないまでも、見違える程の綺麗さとなります。

しかしコンパウンドを使用するにあたって、ポリッシャーと呼ばれる専用器具が必要になり、経験者でなければ様々な不具合が発生してしまうことでしょう。

高速で回転する器具ですので、操作を誤ればボディに傷を付けてしまったり、高速回転しているものをボディへ擦り付けることによって熱も発生しやすく、この結果塗装を剥がしてしまうなど扱いが非常に難しいものとなっています。

器具自体も2万円前後、器具代+取り付けるウールバフ、スポンジ。コンパウンドや拭き取りウエス等、1式揃えるだけでも3万円~4万円程度の費用が発生してしまいます。
一般の方が使用するにはあまりにも高価なわりに、使用頻度も少なく宝の持ち腐れともなりかねません。

磨き作業を業者へ依頼する費用はボディサイズにより異なりますが2万円~5万円程度が相場です。

1度磨き作業を行えば、定期的にスプレーワックス等の簡易的なコーティングの施行を続けることで傷の発生を抑えられますので、新車のような艶を取り戻したいのであれば、磨き作業+コーティング施行を行うことで見違えるほどの艶となるでしょう。

爪に引っかかるような深い傷がある場合

自動車の塗装は何層にもなっており、爪が引っかかる程の傷になってしまえば最も上の層(クリヤーコート)よりも下の層へ傷が及んでいるということになります。

クリヤーコートの下はベースカラーである場合が一般的ですので、塗装色自体に傷が付いてしまえば光の反射が変わり、これまでに紹介したどのような対策を取っても傷を消すことは不可能となります。

対策方法は以下の3点

タッチアップペンを使用して傷を埋める

カー用品店へ行けば1,000円程度で販売されているでしょう。

あくまでも簡易的な修理方法ですので、タッチアップ箇所があからさまに判断されてしまうといった弊害があります。安かろう悪かろうではありませんが、やはり値段相応の応急処置として認識されるのが良いでしょう。

あからさまにタッチアップされているのを極力防ぐ方法として、実際の鈑金塗装工場でも行われている方法があります。

線傷の上下ギリギリにマスキングテープ(セロテープでも可)を貼り、傷の外へ塗料が付着しない様に養生することで傷部分だけをタッチアップすることが可能になります。

鈑金塗装工場がどういった状況でこの知恵を使うのか。

事故などの修理で入庫した際に本来の修理箇所とは異なる箇所を指し、お客様が「ここの傷なんとかならないかなぁ?簡単で良いんだけど」このように相談された場合にはサービスとして行うことも少なくありません。

こちらも簡易的な補修方法ですので、傷は消えない点に留意してください。

缶スプレーを使用する

こちらもタッチアップペン同様に簡易的なものになります。

あくまでもプロの目による判断ですが、缶スプレーで修理された車を見る機械がありますが、決して綺麗に修理されているとは感じられません。

タッチアップペン程度の補修ですと、いざ鈑金塗装工場へ持ち込んだ場合に +α で費用を請求されることは希ですが、缶スプレーによる補修では本来の工程よりもさらに時間を要してしまうため、修理費用を上乗せされかねません。

さらに、スプレータイプは塗料が広範囲に及ぶため、1部分のみの補修は不可能で、パネル全体を塗装しなければなりません。

ベースカラーを吹き付けた後にクリヤーコートを吹き付けなければ艶消し色となってしまい、見るも無残な姿となるでしょう。可能な限り缶スプレーを使用することは避け、タッチアップペン程度の補修で留めておくのが良策です。

鈑金塗装工場へ依頼をして塗装をしてもらう

塗装費用の相場はバンパーの修理で15,000円~が相場ですので、傷が2箇所3箇所と増える度に塗装費用も上乗せされてしまうでしょう。

先ほどの簡易的な補修とは異なり、プロによる修理ですので、パネル全体の艶や浅い傷も新車同様のものに生まれ変わります。

参考までに、全塗装を依頼する場合の相場は10万円~30万円程度。

異なる色への変更を含める場合には+10万円~と大変高額な費用が発生しますが、全ての傷は無くなり艶も新車同様となるため、車を大切にされている方の中には定期的に全塗装を依頼されることも少なくありません。

カーフィルムを貼り付ける

2016年頃から一般的になり、現在でも新車のツートンカラーでは屋根だけをフィルムで覆っている車種などもあります。

遠目で見ると塗装されたツートンカラーのように見えますが、近づくとやはりフィルムだということが一目瞭然ですので、施行には賛否両論あります。

傷対策の一環として透明のフィルムをボディに貼り付け、細かな傷を隠すとともに飛び石などの傷を防止する効果があります。1台2万円程度で施行する業者もありますので、傷隠しとしての費用対効果はとても高いと言えるのではないでしょうか。

しかしこの透明なフィルムにもデメリットは存在します。

透明とは言っても透過率は100%ではないため、塗装が濁って見えてしまう面もありますので、施行されてすぐに剥がしてしまう事例も稀にあります。

やはり簡単に傷を隠すことは一筋縄ではいかなく、日々の手間や努力によって艶を維持することが可能になりますので、傷だと認識する以前から傷防止策としてなにか手を打っておくべきでしょう。

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松岡 清之輔

自動車鈑金業界に勤めて15年(塗装15年、鈑金5年)となります。現在は自動車整備工場の鈑金課に配属されており、こちらの課では全ての作業を一人で行っております。